2020年12月9日にトヨタ自動車より、第二世代となる水素燃料電池車(FCV)「MIRAI」が発表された。
日本政府が政府が電気自動車(EV)の普及を推し進める中、EVとは異なる二酸化炭素削減を実現する自動車を発表する形となった。
はたして世界も驚く水素燃料電池車はEVを超えるのか?
そのメリットと課題について今回は考えていきたい。
EVの普及は必要だがそれだけである必要はない
今や世界的な環境問題を考える上で、EVの普及は必要不可欠といえる状況にある。
2020年10月27日には中国汽車工程学会は、2035年に販売されるNEVの95%が電気自動車になるとみていると明らかにした。
欧州全体においても2019年時点でEVは約100万台普及し、その流れは大きく加速するものとみられている。
その一方で、日本国内においてはEVとは異なる環境車が登場しはじめている。
それが日産が提供する「e-POWER」とトヨタが提供する「水素燃料電池車」である。
結論としては、純粋なEVだけでなくこれら環境車もEVの枠組みに加えるべきだろう。
日産が提供するe-POWERとは?
e-POWERは電気自動車として知られているが、EVとは異なる性質を持つ。
日産はリーフをはじめとするEV技術に力を入れる一方、e-POWERにも力を入れている。
e-POWERとは充電を気にすることなく電気自動車のような走りができることがコンセプトの車で、ノートやキックスなどに搭載されている。
エンジンで発電用モーターを動かすことで発電し、電力を直接走行用モーターに供給することができる仕組みとなっている。
日本国内でEVのみがシェアを占めてしまうと電力の供給不足といった課題が生まれるが、それに対応できる次世代型電気自動車ということができるだろう。
トヨタが提供する水素燃料電池車車(FCV)とは?
トヨタが12月9日に発表した水素燃料電池車「MIRAI」は市場に大きなインパクトを与え、EVをこえるのではないか?という声も出てきている。
水素燃料電池車とはクリーンエネルギーとして知られる水素エネルギーを生かした車を指す。
より具体的に説明すると車FCVとは、水素と酸素を化学反応させることで発電し、その電力でモーターを動かす車となる。
FCVが普及すれば日本国内のEV普及の課題となっている電力供給問題を解決するだけでなく、走行中に水しか出さず二酸化炭素を排出しないため、「究極のエコカー」になるといっても過言ではないだろう。
これが現実に普及するのであればEVを超えるポテンシャルを秘めていると考えられるが、本当にそうなるのか?
FCVの課題やデメリットについても検討する必要があるだろう。
水素燃料電池車車(FCV)の課題・デメリットとは?解決可能か
一般的に危惧されるものとしては水素の危険性が挙げられる。これについては水素はガソリンほどのエネルギーは持っておらず、ガソリンよりも安全性が高いとされている。
危険性についてはトヨタも万全の注意を払っているが、最大の懸念となるのが水素をどのように入れるか?である。
これについても既に水素ステーションは日本に存在しており、ガソリンスタンドと同じように水素を車に取り込むことが可能だ。
そうなると最大の課題は大きく2つ。
水素ステーションをいかに国内に広められるか?と価格帯が挙げられるだろう。
水素ステーションの普及の可能性はあるか?
トヨタの開所予定の水素ステーションの一覧を見ると、全国に広がりつつあることが分かる。少なくとも東京・大阪といった首都圏において困ることはなくなるだろう。
→開所予定水素ステーション一覧
さらに経済産業省が策定している「水素・燃料電池戦略ロードマップ」において水素ステーションの数が2025年に320か所、2030年に900か所増やすことが計画されている。
水素ステーションの建設にはさまざまな条件がありかなり厳しいという声も多いが、トヨタと日本政府が協力して推し進めていくことさえ、決して不可能な数字ではない。
何よりもトヨタにとってFCVはこの先、トヨタの将来を分ける可能性となる車であることは忘れてはいけない。
この計画が順調に進むのであれば水素燃料電池車車(FCV)の普及は充分に可能であり、さらに日本国内のEV化による電力不足問題も解決しながら、二酸化炭素削減活動を推し進めていくことは可能になるだろう。
トヨタ 新型ミライの価格
トヨタ新型ミライの最安グレードである「G」の価格は710万円。CEV補助金は「1,173,000円」、東京都の場合の補助金は101万円となっている。
実質的には500万円以下で買える見込みとなる。
これに加え「エコカー減税」「環境性能割」「グリーン化特例」も受けることができるが、トヨタで質の高いセダンを購入することを踏まえると価格は許容範囲とは言えるだろう。
トヨタミライは初代価格から新型に対して価格を下げている。
しかし、それでも水素燃料電池車車(FCV)価格の高さはネックであることから現段階では大きな普及を見せるのは難しいかもしれない。
同じ電気自動車であるプリウスPHVの価格は400万円を切っているものがあり、一部でもその価格帯まで落とし込めれば「究極のエコカー」とされる水素燃料電池車車(FCV)の普及は充分可能になるだろう。
まとめ
トヨタ ミライの水素自動車はEVを超えるには二つの課題があるが、難しいとされる水素ステーションの普及についてはトヨタと政府で推し進めることができれば実現は充分可能と言える。
ネックとなる価格については最安グレードで実質500万円以下で購入できるものの、本格的な普及にはさらに価格を下げる必要はあるかもしれない。
結論としては現時点で、EVを超えることは難しいが、超えるだけのポテンシャルはあるということはできるだろう。
道のりはカンタンではないかもしれないが、水素燃料電池車車が普及すれば国内の電力供給問題を解消するだけでなく、国内におけるEVとの両立も可能となる。
トヨタ独自の環境施策にはこれからも目が離せない。
元自動車関連会社勤務。全国5つの支店から自走車産業の取り組みと関わる。現在は貧困問題を中心に取材を行う。